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月夜のこと

 月の美しい夜のことでした。一人の少年が、ベッドの上から窓の外を眺めていました。
 なんて奇麗な夜なんだろう、溜息とともに彼は呟きます。見慣れていたはずの景色は、月明りに濡れ、まるで幻想世界。こんな夜には、いつもはうるさいだけの鳥たちでさえなぜだか耳に心地よいのです。ああ、なんて奇麗な夜なんだろう!少年は再び呟きました。
 窓を開けると、優しく暖かな風が入り込んできました。きっと月明りに暖められたのだろう、と少年は思いました。彼はしばらく月に染められた風を、うっとりとした表情で浴び続けました。外では、鳥たちは柔らかな子守唄を歌っています。
 不思議な衝動に駆られ、少年は突然、窓の向こうに咲く月へと手を伸ばしました。か細い腕が、手首が、指が、みな白銀に輝いています。後もう少しで届く。少年はどんどんと手を伸ばしてゆきます。後もう少し。後もう少し。
 だが、月はそんな彼をあざ笑うかのように、彼を照らすだけ。その表面に指先すら触れさせてくれないのです。少年は涙がほほを走るのを感じました。
 鳥たちが、月を背に飛んでいます。まるで風に乗っているかのように、すべっているかのように、舞うそれらを、少年は潤む目で見つめました。
 嗚呼、僕に翼があったら!この背に、あの鳥たちのように白い翼があったら!そうすれば、あの月まで飛べるのに!少年は悲痛な声を上げました。
 突然鳥たちの声が大きくなりました。まるで彼を誘っているかのように、それは鳴きました。

 その日のより以来、少年の姿を見たものは誰もおりません。

(09/Oct/26)

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